ドイツには1,500ほどの醸造所があります。棚に並ぶラベルを端から覚えるのは無理です。
ただ、ドイツビールは「どの地方で造られたか」と「どのスタイルか」の2つが分かると、急に選びやすくなります。ミュンヘンの白く濁った小麦のビールと、北ドイツの苦いピルスナーは、同じ国のビールでもまったく別の飲み物です。
スタイルの違いを先に整理し、そのあと日本で手に入る12本を度数と味で並べます。最後に、どこで買えるかをまとめました。
ドイツビールは地方ごとに種類が違う
ドイツのビールを語るときに必ず出てくるのが、1516年にバイエルン公ヴィルヘルム4世が定めた「ビール純粋令」です。ビールの原料を大麦・ホップ・水に限る、という決まりでした。酵母は当時まだ存在が知られていなかったので、後から加わっています。
この考え方は今のドイツの法律にも残っています。下面発酵のビールは、大麦麦芽・ホップ・水・酵母だけで造る。コーンや米でコストを下げたビールは、ドイツ国内向けにはまず出てきません。一方で上面発酵のビールには小麦麦芽などが認められているので、ヴァイツェンのような小麦のビールが成り立ちます。
そのうえで、地方ごとに好まれるスタイルが違います。
北はキレと苦味のピルスナー。ケルンとデュッセルドルフは、隣り合う街なのにケルシュとアルトという別々の地ビールを抱えています。東のテューリンゲンは黒ビール。そして南のバイエルンには、ヘレス、ヴァイツェン、ボック、燻製のラオホビアまで揃います。
日本で見かけるドイツビールの多くがミュンヘン周辺の銘柄なのは、このためです。9月から10月にミュンヘンで開かれるオクトーバーフェストには市内の大手醸造所しか出店できず、その6社(アウグスティナー、ハッカー・プショール、ホフブロイ、レーベンブロイ、パウラーナー、シュパーテン)が世界的な知名度を持つようになりました。
ドイツビールの主な種類
まずは発酵のしかたで2つに分かれます。
- 下面発酵(ラガー系):低い温度でゆっくり発酵させる。雑味が少なく、すっきりした味になる
- 上面発酵(エール系):高めの温度で発酵させる。酵母由来の果物のような香りが出やすい
これに色の濃さを掛け合わせると、主なスタイルの位置関係が見えます。
| スタイル | 発酵 | 主な産地 | 度数の目安 | 味の特徴 |
|---|---|---|---|---|
| ピルスナー | 下面 | 北部・西部 | 4.5〜5% | ホップの苦味が強く、後味が乾いている |
| ヘレス | 下面 | ミュンヘン | 5%前後 | 苦味は控えめで、麦の甘みがやわらかい |
| ヴァイツェン | 上面 | バイエルン | 5〜5.5% | 小麦を半分以上使う。バナナやクローブのような香り |
| ケルシュ | 上面 | ケルン | 4.8%前後 | 淡い色で軽い。ほんのり果実の香り |
| アルト | 上面 | デュッセルドルフ | 4.5〜5% | 銅色。麦の香ばしさと苦味 |
| シュヴァルツ | 下面 | テューリンゲンなど | 4.8%前後 | 真っ黒だが軽い。焦がした麦の香り |
| ラオホ | 下面 | バンベルク | 5%前後 | 燻製した麦芽を使い、スモークの香りがする |
| ドッペルボック | 下面 | バイエルン | 7%以上 | 濃く甘く、アルコールが強い |
ピルスナーの発祥はチェコのプルゼニで、1842年のことです。ドイツに伝わってから、より苦く、より辛口に寄っていきました。日本の大手ビールもこの系統なので、ドイツビールの入口としては一番なじみやすいスタイルです。
ヘレスは、そのピルスナーに対抗してミュンヘンで生まれました。1894年にシュパーテンが売り出したのが始まりとされています。苦味を抑えて麦の甘さを前に出した、バイエルンらしい日常のビールです。
ケルシュは名前そのものが守られていて、ケルン周辺の醸造所しか名乗れません。現地では200mlの細長いグラスで出てきて、空になると店員が次を置いていく。軽いビールを冷たいうちに飲み切るための仕組みです。
日本で買えるドイツビールおすすめ12選
スタイルが重ならないように12本を選びました。度数を並べると、ほとんどが4.8〜5.5%に収まります。はっきり強いのはドッペルボックだけです。
度数は日本に入ってくる輸入品の表記に合わせています。輸入元やロットによって小数点以下が違うことがあるので、気になる場合はラベルで確かめてください。
1. イェヴァー ピルスナー(4.9%)

北海に近いフリースラント地方の町イェファーで、1848年から造られているピルスナー。12本の中で苦味が最もはっきりしていて、後味は乾いたように切れます。日本のラガーを「物足りない」と感じている人に向く1本。ソーセージやザワークラウトのような塩気と酸味のある料理と合わせると、苦味が甘く感じられます。
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地元の言葉で「フリースラントの辛口」と呼ばれるスタイルです。北ドイツのピルスナーを1本だけ試すなら、ここから。
2. ビットブルガー プレミアム ピルス(4.8%)
ルクセンブルク国境に近いビットブルクで1817年に創業した醸造所の看板商品。イェヴァーほど尖っておらず、苦味と麦の味のバランスがいい。「Bitte ein Bit(ビットを1杯)」という広告のフレーズで、ドイツでは長く親しまれてきました。
ドイツ国内で飲まれる量の多いピルスナーの1つです。癖のない分、揚げ物や餃子のような日本の食卓にも合わせやすい。
3. ベックス(5.0%)
港町ブレーメンで1873年に生まれたピルスナー。緑の瓶と赤い鍵のマークが目印です。3本のピルスナーの中では軽く、炭酸の刺激で飲ませるタイプ。ドイツビールの中でも早くから輸出に力を入れてきた銘柄で、海外で見かける機会が多い。
苦いビールが得意ではない人にとっては、ピルスナーの中で最初の1本になります。
4. ホフブロイ オリジナル(5.1%)
1589年にバイエルン公ヴィルヘルム5世が宮廷用に開いた醸造所のビール。ミュンヘンのビアホール「ホフブロイハウス」の名前で知っている人も多いはずです。オリジナルはヘレスで、苦味は弱く、麦の甘みがやわらかく残ります。
ピルスナーと飲み比べると、同じ淡い色でも「苦さで締める」か「甘さで丸める」かの違いがよく分かります。
5. アウグスティナー ラガービア ヘル(5.2%)
1328年創業、ミュンヘンで最も古い醸造所の定番ヘレス。広告をほとんど出さないことで知られ、それでも地元での人気は根強い。ホフブロイより麦の香りがふくよかで、飲み終わりまで味がだれません。
日本への入荷は多くありません。見つけたときに買っておく銘柄です。
6. パウラーナー ヘフェヴァイスビア(5.5%)
1634年にミュンヘンの修道士たちが始めた醸造所の、濁りのある小麦のビール。バナナのような甘い香りと、きめの細かい泡。苦味がほとんどないので、ビールの苦さが苦手な人でも飲みやすい。
「ヘーフェ」は酵母のこと。瓶の底に酵母がたまっているので、グラスに9割ほど注いだら瓶を軽く回し、残りを注ぎ切ると本来の味になります。
7. エルディンガー ヴァイスビア(5.3%)
ミュンヘン空港に近いエルディングの町で1886年に創業した、小麦のビールを専門に造る醸造所。パウラーナーより香りはおだやかで、酸味が少しあり、すっきり飲めます。
ヴァイツェンを2本飲み比べるなら、パウラーナーとエルディンガーの組み合わせが分かりやすい。香りの強さに差があります。
8. シュナイダー ヴァイセ TAP7 ウンザー オリジナル(5.4%)
1872年、ゲオルク・シュナイダー1世が王家から小麦のビールを造る権利を買い取って始めた醸造所。TAP7は琥珀色で、パウラーナーやエルディンガーより色も味も濃い。バナナの香りに、焼いた麦のような香ばしさが重なります。
同じ醸造所のTAP6「アヴェンティヌス」は8.2%の小麦のボック。TAP7が気に入ったら次に試す1本です。
9. フリュー ケルシュ(4.8%)
ケルン大聖堂のそばに醸造所兼ビアホールを構えるケルシュの代表銘柄。上面発酵ですが、仕上げに低温で寝かせるのでラガーのように澄んだ見た目です。軽く、かすかに果物の香りがして、後味は短い。
冷やしすぎないほうが香りが立ちます。小さめのグラスに少しずつ注いで飲むと、現地の飲み方に近くなります。
10. ケストリッツァー シュヴァルツビア(4.8%)
テューリンゲン州のバート・ケストリッツで、記録上は1543年までさかのぼる黒ビールの醸造所。見た目は真っ黒ですが、スタウトのような重さはありません。焦がした麦の香りのあとに、すっと軽く切れます。
「黒ビールは重い」と思っている人ほど意外に感じるはずです。焼き肉やローストした肉とよく合います。
11. シュレンケルラ ラオホビア メルツェン(5.1%)
バンベルクの老舗ビアホールが造る燻製ビール。ブナの木で燻した麦芽を使い、注いだ瞬間にベーコンやスモークチーズのような香りが立ちます。好き嫌いがはっきり分かれる1本。
最初の一口で驚いても、2口目から慣れる人は多い。燻製のハムやチーズと一緒に飲むと、香りがなじみます。
12. パウラーナー サルヴァトール(7.9%)
パウラーナーの修道士が、食事を控える四旬節の間の栄養源として造ったのが始まりのドッペルボック。濃い茶色で、カラメルのような甘さとアルコールの温かさがある。ほかのドッペルボックの名前が「〜アトール」で終わるのは、このサルヴァトールにならったものです。
冷蔵庫から出して少し置き、ゆっくり飲むビールです。度数が高いので、ほかの11本と同じペースで飲まないように。
好みから1本を選ぶなら
12本を一度に揃える必要はありません。今飲んでいるビールとの距離で選ぶと外しにくい。
- 日本のビールに近い味から始めたい → ベックス、次にビットブルガー
- 苦いビールが好き → イェヴァー ピルスナー
- 苦味は控えめで、麦の甘さがほしい → ホフブロイ、アウグスティナー
- ビールの苦さが苦手 → パウラーナー ヘフェヴァイスビア、エルディンガー
- 軽く何杯も飲みたい → フリュー ケルシュ
- 黒ビールを試したいが重いのは嫌 → ケストリッツァー
- ほかでは飲めない味を → シュレンケルラ、サルヴァトール
飲み比べるなら、軽いものから順に。ピルスナー、ヘレス、ケルシュ、ヴァイツェン、黒ビール、ラオホ、ドッペルボックの順に開けると、前の1本の味に次の1本が負けません。
グラスも少しだけ気にすると違いが出ます。ヴァイツェンは背の高いグラスに注いで泡を立てる。ケルシュは細く小さいグラス。どちらもない場合は、口のすぼまったワイングラスで代用すると香りが分かりやすくなります。
ドイツビールは日本のどこで買えるか
ベックスやヴァイツェンの大手銘柄は、輸入酒を多く扱う酒販店や大きめのスーパーで見つかることがあります。一方でアウグスティナー、シュレンケルラ、フリュー ケルシュのような銘柄は実店舗ではほとんど見かけません。12本を揃えるなら通販が中心になります。
→ イェヴァー ピルスナーを取り扱い。ドイツのほか、ベルギー・イタリア・スペイン・アジアのビールまで直輸入で揃うので、国をまたいだ飲み比べがまとめて買える
- 楽天市場
→ パウラーナー、エルディンガー、シュナイダー ヴァイセなどの定番から、ケルシュやラオホビアのような地ビールまで銘柄数が多い。ドイツビールだけの飲み比べセットもある
実店舗では、カルディのような輸入食品店に時期によってドイツビールが並びます。ただし入れ替わりが早く、同じ銘柄がずっと置いてあるとは限りません。カルディで買えるお酒の傾向はカルディで買えるお酒おすすめ20選にまとめています。
もう1つの手が、日本各地で開かれるオクトーバーフェストです。東京の日比谷公園などで開催され、ミュンヘンの醸造所の樽生を飲めることがあります。気に入った銘柄を見つけてから瓶で取り寄せる、という順番でも損はありません。
通販サイトごとの送料や品揃えの違いは、輸入ビールが買えるネット通販8選で比べています。
KOKYO MARKET で買えるおすすめ商品
この記事で紹介した商品の多くは、輸入食品・お酒の通販サイト KOKYO MARKET で購入できます。中国・台湾・韓国・ベトナムの食材から海外のビール・ワインまで、日本ではなかなか手に入らない商品を直輸入で取り扱っています。

ベルギー ヒューガルデンホワイト 330ml瓶 ABI 海外輸入ビール 770円
メッシーナ シチリア MESSINA 330ml瓶 イタリアビール 1,000円
イェヴァー ピルスナー Jever Pilsener 瓶330ml ドイツビール 1,980円
ニュートン(青リンゴビール)330ml ベルギービール 3,600円
ほかの国のビールにも広げるなら
ドイツビールで自分の好みが分かると、ほかの国のビールも選びやすくなります。苦いピルスナーが気に入ったならチェコやデンマーク。ヴァイツェンの香りが好きなら、ベルギーの白ビールが近い方向にあります。
国ごとの味の傾向は海外ビールおすすめ30選で整理しました。ドイツビールを贈り物にしたい場合は、海外ビール詰め合わせギフトおすすめ10選に飲み比べセットの選び方があります。



