無味無臭の酒、と説明されることが多いお酒です。それなのに棚に並ぶ瓶は1本1,000円台から5,000円超まであり、値段が3倍以上違う。無味無臭なら、どれを買っても同じではないのか。
同じではありません。ウォッカは「何を残すか」ではなく「何を削るか」で造られる酒なので、削り切れずに残ったものが銘柄の個性になります。原料が小麦かライ麦か米かで、残るものが変わる。
主要な銘柄を、原料と度数の数字を出しながら一覧にしていきます。日本ではあまり紹介されないアジアの米ウォッカも入れました。

ウォッカとは何が決まっている酒なのか
定義はかなり緩いお酒です。
EUの規則では、農産物由来のアルコールを蒸留したもので、アルコール度数37.5%以上。これがほぼ唯一の縛りです。原料の指定がないので、穀物でもじゃがいもでもぶどうでも、条件を満たせばウォッカと呼べます。アメリカ市場では40%が標準になっています。
造り方に共通しているのは、蒸留のあとに白樺炭などで濾す工程です。ここで雑味や香りの成分が吸着されて、あの透明でクセのない液体になります。濾す回数と蒸留の回数が多いほどクリアになり、少なければ原料の性格が残る。
ジンとの違いは、香りを足すかどうか。 ジンはジュニパーベリーなどの植物で香りを付けることが定義に含まれています。ウォッカは足しません。焼酎との距離も近くて、日本の甲類焼酎は製法だけ見ればウォッカとほぼ同じ手順を踏んでいます。
種類を分ける3つの軸
「ウォッカの種類」を調べると銘柄名が並ぶだけのページが多いのですが、分け方の軸を先に持っておくと棚の見え方が変わります。
軸1:原料
味の差がいちばん出るところです。
小麦はクセが出にくく、プレミアム系の銘柄に多く使われます。ライ麦は香ばしさとスパイシーさが残り、ポーランドのウォッカに特徴的。トウモロコシは軽く、ほのかに甘い。じゃがいもは口当たりにとろみが出ます。
そして米。ベトナムのウォッカはもち米で造られていて、米の甘い香りが最後まで残ります。東欧や西欧の銘柄には無い系統なので、飲み慣れた人でも一口目で驚くはずです。
軸2:ピュアかフレーバードか
何も足さないものがピュアウォッカ、果実やハーブで香りを付けたものがフレーバードウォッカです。
フレーバードの代表はポーランドのズブロッカ。バイソングラスという草を漬け込んでいて、日本では「桜餅の香り」と言われます。アブソルートはシトロン、ラズベリ、ペッパーなど十数種のフレーバー版を出しています。
ピュアのほうがカクテルの幅は広い。フレーバードは香りが主役になるので、ソーダで割るくらいが向いています。
軸3:度数
37.5度から96度まで、幅が異常に広いのがウォッカです。
主要銘柄はほぼ40度に集まっています。ここから外れるのが、37.5度のズブロッカ、50度のウィルキンソン、そして96度のスピリタス。スピリタスはそのまま飲むものではなく、果実酒を仕込んだりカクテルの材料に使うための度数です。
下に振れる例はアジアにあります。ベトナムのハノイウォッカは29.5度。食事と一緒に飲み続ける前提で設計されているので、ウォッカとしてはかなり低い設定です。
銘柄ごとの味の違い一覧
日本で手に入るものを中心に14本並べました。
| 銘柄 | 産地 | 原料 | 度数 | 味の方向 |
|---|---|---|---|---|
| スミノフ レッド | イギリスほか | トウモロコシ | 40度 | 軽い。カクテルの土台向き |
| アブソルート | スウェーデン | 冬小麦 | 40度 | 丸くふくよか |
| Stoli(旧ストリチナヤ) | ラトビア | 小麦・ライ麦 | 40度 | シャープでキレがある |
| フィンランディア | フィンランド | 六条大麦 | 40度 | クリア。穏やかな甘み |
| グレイグース | フランス | 冬小麦 | 40度 | 柔らかい口当たり |
| ベルヴェデール | ポーランド | ライ麦 | 40度 | 香ばしく厚みがある |
| ケテルワン | オランダ | 小麦 | 40度 | すっきり。余韻が短い |
| シロック | フランス | ぶどう | 40度 | 果実の香りが立つ |
| ズブロッカ | ポーランド | ライ麦+バイソングラス | 37.5度 | 甘い草の香り |
| スピリタス | ポーランド | 穀物 | 96度 | 割って使う前提 |
| ウヰルキンソン・ウオッカ | 日本 | 穀物 | 40度/50度 | ほのかに甘くまろやか |
| ニッカ カフェウオッカ | 日本 | 大麦麦芽・トウモロコシ | 40度 | 麦芽の香りとコク |
| ネプモイ | ベトナム | もち米 | 40度 | 米の甘い香りが残る |
| ハノイウォッカ | ベトナム | 米 | 29.5度 | 軽く、食事に寄る |
東欧・ロシア系
ウォッカの本流です。ストリチナヤは2022年に「Stoli」へ名前を変えていて、古い記事とラベルが一致しないことがあります。製造はラトビアです。
ポーランドのベルヴェデールはライ麦だけで造る銘柄で、口に含んだときの香ばしさがはっきりある。ズブロッカと合わせて、ポーランドのウォッカは「香りが残る」方向だと覚えておくと選びやすくなります。
北欧系
フィンランディアは氷河期の地層を通った水を使っています。六条大麦が原料で、味の輪郭は穏やか。
アブソルートはスウェーデンのオーフス産の冬小麦。連続蒸留で仕上げていて、40度あるのに角が立ちません。フレーバーの数が多いので、1本目をピュアにして2本目で好みの香りを足す、という買い方ができます。
西欧のプレミアム系
グレイグースはフランスのピカルディ産小麦と、コニャック地方の湧水を使います。値段は5,000円前後。ストレートで飲んだときの滑らかさに払う価格です。
シロックだけは原料がぶどうで、この一覧の中では例外的な存在。穀物由来の香りがない代わりに、柑橘のような香りが残ります。
日本の銘柄
ウヰルキンソンはアサヒが出していて、40度と50度があります。白樺炭で濾す工程を踏んだ正統派で、価格は1,500円前後。家でモスコミュールを作るならこれで足ります。
ニッカ カフェウオッカは、カフェ式連続式蒸留機という古い機械を使って原料の香りを意図的に残したもの。「クセのないウォッカ」の逆を行く設計です。
米で造るウォッカという抜け道

ここまでの銘柄に飽きた人向けの話です。
ベトナムには米ともち米から造るウォッカがあります。フランス統治期にウォッカの製法が入り、原料が現地の米に置き換わったもの。炭で濾しても米の甘い香りが残るので、東欧のウォッカとはまるで違う飲み物に感じられます。
度数の幅も広く、29.5度から40度まで。値段は500mlで2,000円前後です。銘柄ごとの詳細は日本で買えるベトナム産ウォッカ5選にまとめています。
ネプモイ(40度)

もち米が原料。40度あるのに米の甘い香りが立ち、ウォッカとしては異質な一本。
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ベトナムで最もよく知られた銘柄です。「ネプ」はもち米、「モイ」は新しいという意味。
40度なので飲み口は強いのですが、鼻に抜けるのは米の香り。日本酒の吟醸香に近いものを感じる人もいます。ストレートで少量ずつ飲むか、ライムを搾って炭酸で割るのが合います。
ルアモイ(40度)

米を原料にした40度。ネプモイより香りは控えめで、カクテルにも回せる。
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ネプモイと同じ蒸留所の系統で、原料がうるち米。香りの出方が穏やかなので、ネプモイを甘すぎると感じた人はこちらへ。
ベトナムの食堂では、氷を入れた小さなグラスで料理と一緒に飲まれています。
ハノイウォッカ(29.5度)

29.5度。ウォッカとしては低く、食事に合わせて飲み続けられる設計。
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ベトナム土産としていちばん流通している1本です。29.5度は、ウォッカの一覧に並べるとかなり低い。
それでも水っぽくならないのは、米の甘みが残っているからです。ウォッカを普段飲まない人に出すなら、40度の銘柄よりこちらのほうが受けがいい。
ハノイウォッカ・プレミアム(33度)

33度。濾過を重ねてあり、同じハノイウォッカでも輪郭がはっきりする。
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同じハノイウォッカの上位版で、度数が33度に上がります。濾過の工程を増やしているぶん雑味が少なく、ストレートでも飲みやすい。
29.5度と飲み比べると、3.5度の差以上に印象が違います。2本まとめて買っても4,000円ほどなので、比べてみる価値はあります。
おすすめの飲み方
冷凍庫で冷やしてストレート
度数40度の酒は家庭用の冷凍庫でも凍りません。氷点下まで冷やすととろみが出て、香りが締まります。ロシアや北欧の飲み方で、プレミアム系の銘柄はこれがいちばん差が出る飲み方です。
ショットグラスで少量ずつ。塩気のあるものをつまみながら飲むと進みます。
モスコミュール
ウォッカ45ml、ジンジャーエール、ライム。銅製のマグで出す店が多いですが、なくても味は変わりません。土台になるウォッカは香りの弱いものが向くので、スミノフやウィルキンソンで十分です。
スクリュードライバー
ウォッカ45mlにオレンジジュース。比率は1対3あたりから。ウォッカの存在が消えるほど飲みやすくなるので、度数の感覚が狂いやすい組み合わせでもあります。
ソーダ割り・トニック割り
フレーバードウォッカと米ウォッカに向きます。ズブロッカならりんごジュースで割る「シャルロッカ」が定番。ネプモイはライムを搾って炭酸で割ると、米の香りが立ったまま軽くなります。
常温でショット
ベトナムや中国での飲み方です。冷やさないぶん香りがそのまま出るので、原料の個性を確かめたいときはこちら。中国の白酒も同じ飲み方で、中国酒「白酒(バイジュウ)」とは?飲み方は?で触れています。
日本ではどこで買えるか
銘柄の幅は買う場所で大きく変わります。
一般のスーパー・コンビニ
スミノフとウィルキンソンが中心です。置いてあるのは実質2〜3種類だと考えておいてください。
大型の酒販店・カルディ
やまややリカーマウンテンのような専門店なら、アブソルート、ズブロッカ、フィンランディアあたりまで並びます。プレミアム系も1〜2銘柄は置かれていることが多い。カルディはズブロッカを扱う店舗があります。
輸入食品の通販
アジアの米ウォッカや、スピリタスのような特殊な度数のものは通販が確実です。実店舗を回るより早く、まとめ買いすれば1本あたりの送料負担も下がります。
→ ベトナムの米ウォッカを4銘柄とも直輸入で取り扱い。中国・台湾の白酒や紹興酒も同じ店でまとめられる
- 楽天市場
→ 東欧・西欧のプレミアム系まで銘柄の幅が広い。箱買いで単価が下がる
KOKYO MARKET で買えるおすすめ商品
この記事で紹介した商品の多くは、輸入食品・お酒の通販サイト KOKYO MARKET で購入できます。中国・台湾・韓国・ベトナムの食材から海外のビール・ワインまで、日本ではなかなか手に入らない商品を直輸入で取り扱っています。

最高級ベトナムウォッカ ハノイウォッカ・プレミアム Vodka Premium 33% 500ml 2,000円
飲みやすいベトナム酒 ハノイウォッカ 29.5% Vodka Hà Nội 29.5% 500ml 2,000円
ベトナム産 ウォッカ ネプモイ Vodka Nep moi 500ml 40% 2,100円
ウォッカ ・ルアモイ ベトナム産40% Vodka "Lua moi" 500ml 1,980円
通販サイトごとの送料や品揃えの違いは輸入酒が買えるネット通販10選で比較しました。ウォッカ以外の海外の酒も見比べたい人は【国別】海外のお酒おすすめ30選が早いはずです。
現地で買って持ち帰る
ベトナムやポーランドで買えば日本の半額以下になりますが、機内持ち込みと預け入れのルールに引っかかります。度数70度を超えるものは預け入れもできません。スピリタスを現地で買って帰ろうとして止められるのはこのパターンです。条件は海外のお酒はお土産で持ち帰れる?にまとめています。
開けたあとの扱い
蒸留酒なので、未開封なら賞味期限の表示はありません。何年置いても中身が変質することはないです。
開封後も日持ちします。40度あれば1年単位で置いても飲めます。気をつけるのはフレーバードと米ウォッカで、香りの成分が先に飛ぶので、開けたら数か月で飲み切るつもりでいたほうがいい。
置き方は立てたまま、直射日光を避ける。冷凍庫に入れっぱなしにしても問題ありません。
最初の1本を選ぶなら
カクテルを作るのが目的ならスミノフかウィルキンソン。1,500円前後で、モスコミュールにもスクリュードライバーにも使えます。
ストレートで味を見たいならアブソルートから。40度で角が立たず、ウォッカの標準的な味を知るには都合がいい。そこから香ばしさが欲しければベルヴェデール、滑らかさならグレイグースへ進めます。
変わったものを飲みたいなら、ネプモイかハノイウォッカ。米の香りが残るウォッカは、ここまでに挙げたどの銘柄とも似ていません。2,000円前後で驚けるという意味では、コストパフォーマンスは悪くない選択です。



