コンビニの棚に500円台のワインが並んでいたら、かなりの確率でチリ産だ。フランス産なら2,000円を超えそうな品種名の赤が、ワンコインで買える。
安いのには理由がある。よく言われるのは「関税がゼロだから」。ただ、これだけでは説明が足りない。2019年にはフランスやイタリアのワインも関税ゼロになっているからだ。
関税の話から始めて、畑、会社の規模、輸出の仕組みまで順に見ていく。最後に、安さの理由がそのまま味に出ている銘柄を6本挙げる。
チリワインが安い理由は「関税」だけではない
先に全体像を書いておく。チリワインの安さは、次の5つが重なった結果になっている。
- 日本との経済連携協定(EPA)で関税がゼロになった
- 雨が少なく、ブドウの病気が出にくい
- 害虫フィロキセラの被害を受けておらず、苗の植え替えコストが小さい
- 土地代と人件費が安く、大手が広い畑をまとめて持っている
- 国内で飲む量が少なく、最初から輸出前提で造っている
1だけが制度の話で、2〜5はブドウを育てて瓶に詰めるまでのコストの話だ。今のチリワインの価格を支えているのは、むしろ後ろの4つのほうになる。
関税ゼロでいくら安くなったのか
日本とチリのEPAは2007年9月に発効した。ワインの関税はそこから段階的に下がり、2019年4月にゼロになった。
EPAがなかった場合、ボトル入りワインの関税は「価格の15%」か「1Lあたり125円」の低いほう(最低でも1Lあたり67円)。750mlの瓶なら、上限で約94円になる。
94円は、2,000円のワインにとっては誤差に近い。500円のワインにとっては2割近い重さだ。関税ゼロの効き目が大きいのは、もともと安い価格帯のほうだと分かる。
輸入量もこの流れに合わせて伸びた。1990年代には輸入ワインの1〜5%ほどだったチリ産が、2015年にはスティルワイン(泡のないワイン)の輸入量でフランスを抜いて1位になり、2017年にはシェア31%まで広がっている。
EU産も関税ゼロになった今、差はどこから来るか
2019年2月、日本とEUのEPAが発効した。フランス、イタリア、スペインのワインは関税が即時撤廃されている。チリの関税ゼロより2か月早い。
つまり今は、関税の条件はほぼ横並びだ。それでもスーパーの価格差が縮まらないのは、瓶に詰める前の段階、つまりブドウとワインそのものの原価が違うからになる。
畑の条件がコストを下げている
雨が少なく、農薬を減らせる
チリのワイン産地が集まる中部は、夏にほとんど雨が降らない。ブドウの大敵はカビ由来の病気で、湿気が多いほど防除の回数が増える。雨が少なければ、その手間と薬剤代が小さくなる。
水はアンデス山脈の雪解け水を畑に引いて補う。日照は長く、夜は太平洋からの冷たい空気で冷える。昼夜の寒暖差が大きいので、安いワインでも果実の味が濃く出やすい。
フィロキセラがいない
19世紀の後半、ヨーロッパのブドウ畑は根につく害虫フィロキセラでほぼ壊滅した。今でもヨーロッパの多くの畑では、この虫に強いアメリカ系の台木に接ぎ木した苗を使っている。
チリはこの被害を受けていない。東はアンデス山脈、西は太平洋、北はアタカマ砂漠、南は氷河。四方を自然の壁に囲まれていて、虫が入ってこなかった。接ぎ木をせず、枝を挿すだけで苗を増やせる畑がある。苗代も手間も安く済む。
会社の規模と人件費
チリのワイン業界は、少数の大手が強い。コノスルを傘下に持つコンチャ・イ・トロは、世界でも有数の規模のワイン会社だ。
大手は広い畑を自社で持ち、醸造設備にもまとめて投資できる。1本あたりの設備費が薄まるうえ、同じ銘柄を毎年ほぼ同じ味で大量に出せる。日本の輸入元からすると、安定して大量に仕入れられる相手になる。
土地代と人件費も、ヨーロッパの銘醸地に比べれば低い。ボルドーやブルゴーニュの有名な村では、畑の価格そのものがワインの値段を押し上げている。チリにはその上乗せがほとんどない。
最初から輸出向けに造っている
チリの人口は約2,000万人。国内でワインを飲む量は、生産量に比べて大きくない。生産量の多くを海外に売る前提で、ワイナリーが設計されている。
輸出が前提だと、ラベルも中身も売り先に合わせて造れる。チリのワインがラベルに品種名を大きく書き、果実味のはっきりした分かりやすい味に寄せているのはそのためだ。日本、中国、アメリカ、イギリス。どこの棚に並んでも、品種名で選んでもらえる。
船での輸送は1か月ほどかかる。距離だけ見ればフランスと大差はない。輸送費が安さの決め手になっているわけではない。
安いチリワインは質が低いのか
安い理由の大半は「造るのにお金がかからない」ことで、手を抜いているからではない。雨が少ない、虫がいない、畑が広い。どれも味を落とす要因ではない。
ただ、価格帯で中身は変わる。
- 1,000円未満:複数の産地のブドウを合わせ、樽を使わずに果実味を前に出したものが中心。軽めで、冷やし気味でも飲める
- 1,000円台:特定の谷のブドウを使い、樽で寝かせた上位シリーズが増える。香りに厚みが出る
もう一つ気をつけたいのが、「国内製造」と書かれた安いワインだ。チリから樽ごと運んだワインや濃縮果汁を、日本の工場で瓶に詰めたものがある。表ラベルに「輸入ワイン使用」「濃縮果汁使用」などの表示があるので、チリで瓶詰めされたものが欲しければ裏返す前に表を見ればいい。どちらが悪いという話ではなく、別の商品として選べばいい。
安さの理由が味に出ているおすすめ6本
価格は大手通販・量販店での実勢価格の目安(2026年9月時点)。店によって上下する。
サンタ・ヘレナ アルパカ カベルネ・メルロー(目安500〜700円)
アルパカのラベルでおなじみ。大手が大量に造るからこの値段で出せる、という話をいちばん分かりやすく体現している1本だ。メルローを混ぜて渋みを抑えてあり、ワインを飲み慣れていない人でも飲める。
コノスル ビシクレタ・レゼルバ ピノ・ノワール(目安700〜900円)
自転車のラベル。ピノ・ノワールはブルゴーニュなら数千円はする品種で、それが1,000円を切る。冷涼な海沿いの産地を持つチリだから出せる価格になっている。軽やかで、赤でも和食に寄せやすい。
サンタ・リタ 120 カベルネ・ソーヴィニヨン(目安900〜1,200円)
名前は、1814年の独立戦争で120人の兵士がこのワイナリーの蔵に身を隠したという話から来ている。果実味がまっすぐで、渋みは中くらい。1,000円前後のチリ・カベルネの基準として覚えておくと便利だ。
エミリアーナ エコ・バランス カベルネ・ソーヴィニヨン(目安900〜1,200円)
雨が少ない気候を活かして、有機栽培のブドウで造るシリーズ。農薬を減らしやすいチリの畑の条件が、そのまま商品の個性になっている。ハーブのような渋みがあとから来る。
カッシェロ・デル・ディアブロ カベルネ・ソーヴィニヨン(目安1,300〜1,600円)
コンチャ・イ・トロのブランドで、名前は「悪魔の蔵」。1,000円台に上がると、樽のバニラの香りと黒い果実の密度がはっきり増す。価格帯による違いを知るなら、上のサンタ・リタ 120と並べて飲むといい。
モンテス クラシック・シリーズ カベルネ・ソーヴィニヨン(目安1,500〜1,900円)
天使のラベルのモンテス。上位のモンテス・アルファは2,500円を超えるが、入門のクラシックならこの価格に収まる。果実味は濃く、後味はすっきり切れる。肉料理の日に。
チリ以外の国のワインと比べたくなったら、国ごとの特徴を並べた海外ワインおすすめ30選が参考になる。
チリワインはどこで買える?
1,000円未満の定番は、コンビニとスーパーでまず見つかる。アルパカやコノスルのビシクレタは、全国チェーンならたいてい置いている。
1,000円台の上位シリーズは、酒の量販店か、ワインの棚が広いスーパー、カルディのような輸入食品店が中心になる。カルディで買えるワインはカルディのワインおすすめランキングにまとめた。
銘柄を決めて買うなら通販が早い。
- 楽天市場
→ チリワインの銘柄数が多く、6本・12本の飲み比べセットもある。ポイントを乗せられる
→ 輸入食品とお酒の通販。チリワインの取り扱いはないが、オーストラリアのカベルネやスペインの熟成赤など、同じく果実味の濃いワインを1,000円台後半から揃えている。アジアの食品やおつまみと一緒にまとめて頼める
- 酒の量販店の公式通販
→ 店舗と同じ価格帯で、在庫を見てから買える
チリのカベルネが気に入ったら、次はオーストラリアのカベルネを試してみると面白い。どちらも日照に恵まれた産地で果実味が濃いが、オーストラリアのほうはユーカリやミントのような香りが出やすい。

スペインの熟成赤もいい。樽で寝かせた「クリアンサ」の格付けが付いていて、チリの1,000円台と同じく、価格のわりに香りに厚みがある。

KOKYO MARKET で買えるおすすめ商品
この記事で紹介した商品の多くは、輸入食品・お酒の通販サイト KOKYO MARKET で購入できます。中国・台湾・韓国・ベトナムの食材から海外のビール・ワインまで、日本ではなかなか手に入らない商品を直輸入で取り扱っています。

ソルトブッシュ シャルドネ クオリア・ワインズ 750ml 1,980円
クオリア・ワインズ ソルトブッシュ カベルネ・ソーヴィニヨン 750ml オーストラリアワイン 1,980円
白ワイン サングリア アラリカ 2,000円
赤ワイン サングリア アラリカ 2,000円
送料や品揃えを通販サイトごとに比べたいときは、輸入ワインが買えるネット通販10選を見てほしい。
よくある質問
関税ゼロになったのはいつ?
2019年4月1日。2007年9月の日本・チリEPA発効から、約12年かけて段階的に下がった。
フランスワインも関税ゼロなのに、なぜチリのほうが安い?
関税以外のコストが違うからだ。畑の値段、人件費、病気や害虫への対策費。どれもチリのほうが小さい。フランスの有名産地では、土地の名前そのものが価格に乗っている。
安いチリワインに酸化防止剤は多い?
酸化防止剤(亜硫酸塩)は価格に関係なく、ほとんどのワインに使われている。チリ産だから多いということはない。気になる場合は、ラベルに酸化防止剤を使っていないと書かれたものを選ぶ。
開けたあと、どのくらいもつ?
栓をして冷蔵庫に入れれば、赤でも白でも2〜3日は飲める。スクリューキャップの銘柄が多いので、飲み残しを閉め直しやすい。
安さの理由を知ると、棚の見方が変わる
チリワインが安いのは、関税がゼロだからだけではない。雨が少なく、虫がいなくて、畑が広い。造るのにお金がかからない土地で、輸出前提の大手が大量に造っている。
だから、安いからといって身構える必要はない。まずは1,000円前後のカベルネと1,000円台後半のカベルネを1本ずつ買って、並べて飲んでみてほしい。500円の差がどこに出るかが分かれば、次からは値札と品種名だけで選べるようになる。
合わせるつまみに迷ったら、輸入おつまみおすすめ20選にワインと合わせやすいものを集めてある。



