業務スーパーの棚で、エストニア産のビールが国産の缶より安く並んでいる。海を越えて運んできたのに、なぜ安いのか。不思議に思った人は多いはずだ。
先に答えを書くと、「輸入ビールは安い」は半分だけ正しい。安いのは一部のタイプで、瓶入りの有名銘柄やクラフトビールはむしろ国産より高い。安い輸入ビールと高い輸入ビールでは、値段の決まり方がまるで違う。
税金の仕組みから順に見ていく。2026年10月1日の酒税改正で前提が変わった部分もあるので、そこも押さえておきたい。
海外ビールが安くなる理由は4つ
安い輸入ビールの値段は、次の4つが重なってできている。
- ビールには関税がかからない
- 安い輸入品の多くは、税金の軽い発泡酒や新ジャンルだった
- 大量生産の定番ラガーは、製造原価がそもそも低い
- 小売店が直輸入して、卸の取り分を省いている
1と2が税金の話、3と4がコストの話だ。順番に見ていく。
ビールの関税は0円
意外と知られていないが、日本に輸入されるビールには、実際にはほとんど関税がかからない。
税関の実行関税率表を見ると、ビール(税番2203.00)の基本税率は1Lあたり6.40円。ただしWTO加盟国からの輸入に使う協定税率は「無税」になっている。ドイツ、ベルギー、アメリカ、中国、台湾、ベトナムなど、ビールの主な輸出国はすべてWTO加盟国・地域なので、関税は0円で入ってくる。
ワインでは、チリ産が関税ゼロで一気に安くなったという話がある(チリワインはなぜ安い?に詳しく書いた)。ビールにはそういう国ごとの差がない。どこの国のビールも、関税の条件は横並びだ。
酒税は国産ビールと同じ額
一方で、酒税は輸入品にも国産品と同じ額がかかる。輸入した時点で、税関が国産と同じ税率で徴収する。
日本のビールは、価格のうち税金の割合が大きい。2026年10月以降、ビールの酒税は350ml缶1本あたり54.25円。これに消費税10%が乗る。220円の缶ビールなら、酒税と消費税を合わせて約74円。店頭価格の3割強が税金という計算になる。
つまり税金の面では、輸入ビールが国産ビールより有利になる理由はない。安さの理由は別のところにある。
安い輸入品の多くは「ビール」ではなかった
ここがいちばん見落とされやすい。
スーパーで100円台で売られている輸入のビール系飲料は、缶の表示を見ると「発泡酒」や「リキュール(発泡性)①」と書かれていることが多い。業務スーパーで扱っている韓国産の麦旨GOLD 糖質70%オフも、分類は発泡酒だ。
日本の酒税は、麦芽の比率や原料によって税率が分かれてきた。2026年9月までは、350ml缶1本あたりでこうなっていた。
- ビール:63.35円
- 発泡酒(麦芽比率25%未満):46.99円
- 新ジャンル(第3のビール):46.99円
ビールと発泡酒の間には、1缶で16円以上の差があった。海外のメーカーは、日本の税区分に合わせて原料を組み立て、税の軽い区分で輸出してくる。韓国やベルギーで造られた新ジャンルが安く並んでいたのは、このためだ。
海外で造っているから安いのではない。日本の税区分で軽いほうに入るように造っているから安い。輸入かどうかより、分類のほうが値段に効いていた。
定番ラガーは大量生産で原価が低い
税金以外のコストでは、生産規模が大きい。
世界的な定番ラガーは、何百万ケースという単位で造られている。原料を大量に仕入れ、同じ設備で回し続けるほど、1本あたりの原価は下がる。東欧や東南アジアのビールは、現地の人件費や土地代も日本より安い。
輸送費も、思われているほどは重くない。缶ビールはコンテナに隙間なく積めて、1本あたりの海上運賃はごく小さい。重くて割れやすい瓶は、そのぶん運ぶコストが上がる。
小売店の直輸入で中間の取り分が消える
業務スーパーの輸入ビールは、運営元の神戸物産が自ら輸入している。コストコも同じで、海外のメーカーから直接まとめて仕入れる。
通常の流れでは、輸入業者から卸を経て小売店に届く。それぞれが取り分を乗せるので、店頭に並ぶころには価格が上がっている。直輸入ならこの段が1つか2つ消える。
エストニアのSAKUのように、業務スーパー以外ではまず見かけない銘柄が安いのは、この仕組みによるところが大きい。業務スーパーで買える輸入ビールは業務スーパーの輸入ビールランキングに全部書き出してある。
逆に、高い輸入ビールはなぜ高いのか
ハイネケンやヒューガルデンの瓶、ベルギーの修道院ビール、アメリカのクラフトビール。こちらは国産より高いことがほとんどだ。理由は安いビールの裏返しになる。
瓶で少量ずつ運ぶ。 瓶は重く、割れないよう梱包にも手間がかかる。クラフトビールは1回の輸入量が少なく、コンテナ1本あたりの本数で運賃を割れない。
冷蔵が要る。 香りを売りにするIPAなどは、劣化を防ぐために冷蔵コンテナで運ぶことがある。普通の輸送より運賃が高い。
代理店と卸を通る。 専門の輸入代理店が日本向けの表示を付け、卸を経て酒販店に届く。流通の段数が多いほど価格は上がる。
原価そのものが高い。 小さな醸造所は、大量に造って1本あたりの原価を下げることができない。ホップを多く使うビールは原料費もかさむ。
同じ「輸入ビール」でも、缶の定番ラガーと瓶のクラフトでは、値段の決まり方が別物と考えたほうがいい。
2026年10月の酒税改正で何が変わったか
2026年10月1日、ビール系飲料の酒税が一本化された。2020年から3段階で進んできた見直しの最後の段階にあたる。
ビールは1缶あたり9.10円の減税。発泡酒(麦芽比率25%未満)と新ジャンルは7.26円の増税で、3つとも54.25円にそろった。
輸入ビールの値段にとって、これは小さくない変化だ。
- 税の軽い区分で安くしていた輸入の発泡酒・新ジャンルは、税金の差という強みを失った
- ビールに分類されるものは減税になり、国産・輸入とも値下がりする余地ができた
店頭価格をいくら動かすかはメーカーと小売店しだいなので、すぐに全部の棚が変わるわけではない。ただ、「安い輸入ビール=税金の軽い発泡酒」という構図は、これから崩れていく。安さの理由は、大量生産と直輸入のほうに寄っていくことになる。
輸入ビールを安く買うコツ
缶の「品目」の表示を見る
缶の裏にある「品目」の欄を見ると、ビールか、発泡酒か、リキュールかが分かる。値段だけで選ぶと、ビールのつもりで新ジャンルを買っていることがある。味が好みなら問題ないが、比べるなら同じ品目どうしで比べたい。
1mlあたりで比べる
輸入ビールは容量がまちまちだ。320ml、330ml、350ml、500mlが同じ棚に並ぶ。SAKUは320mlなので、国産の350ml缶と値段だけで比べると、少し得に見える。1mlあたり、あるいは350ml換算で計算すると、本当に安いのがどれか分かる。
直輸入している店で買う
業務スーパーやコストコのように、自社で輸入している店は定番ラガーが安い。カルディも輸入ビールの種類が多く、季節の限定品も入る。カルディの品揃えはカルディで買える輸入ビールにまとめた。
通販は送料込みの1本単価で見る
通販でいちばん効くのは送料だ。1本の値段が安くても、数本の注文に送料が乗れば単価は一気に上がる。飲み比べセットやケースでまとめて買い、送料を割るのが基本になる。
好みが決まっていないうちは、いきなり24本のケースを買わないほうがいい。6本前後のセットで当たりを見つけてからケースに移るほうが、飲み残しが出ないぶん結局安くつく。
輸入ビールはどこで買える?
スーパー・輸入食品店
定番の輸入ラガーを安く買うなら、まず業務スーパーとコストコ。カルディや成城石井は値段より種類で選ぶ店だ。大きめの酒販店には、ベルギーやドイツの瓶ビールの棚がある。
ネット通販
日本の店頭であまり見かけないアジアやヨーロッパのビールは、通販のほうが見つけやすい。
→ 台湾・中国のビールからヨーロッパの定番まで直輸入で扱う輸入食品とお酒の通販。台湾フルーツビールの飲み比べセットなど、まとめ買い向けのセットがある
- 楽天市場
→ ケース買いの品揃えが厚く、ポイントも貯まる
KOKYO MARKET で扱っている輸入ビールから、よく選ばれているものを挙げておく。
青島ビール(中国)


1903年創業、中国でいちばん知られたビール。軽くすっきりしたラガーで、餃子や中華の炒め物によく合う。
KOKYO MARKET で見る(1,600円) / 楽天市場で「チンタオ 青島ビール 瓶 330ml」を探す
中国のビールの種類は中国ビールの種類と有名銘柄で詳しく紹介している。
金牌台湾啤酒(台湾)

台湾でもっともよく飲まれている定番のラガー。米を使った軽い口当たりで、味の濃い料理に合わせやすい。
KOKYO MARKET で見る(1,600円) / 楽天市場で「金牌台湾啤酒 プレミアムビール 瓶 330ml」を探す
台湾フルーツビールの飲み比べセット


パイナップル、マンゴー、ライチ、グレープ、蜂蜜など6種を1缶ずつ。どれが好みか分からないうちは、セットから入ると無駄が出ない。
KOKYO MARKET で見る(2,700円) / 楽天市場で「台湾ビール6種飲み比べセットゴールド」を探す
台湾ビールの味の違いは台湾ビールのレビューにまとめた。
ハイネケン(オランダ)

世界中で飲まれているオランダのラガー。苦みは控えめで、どんな料理にも合わせやすい。
KOKYO MARKET で見る(1,700円) / 楽天市場で「ハイネケン 330ml ロングネック瓶」を探す
KOKYO MARKET で買えるおすすめ商品
この記事で紹介した商品の多くは、輸入食品・お酒の通販サイト KOKYO MARKET で購入できます。中国・台湾・韓国・ベトナムの食材から海外のビール・ワインまで、日本ではなかなか手に入らない商品を直輸入で取り扱っています。

ベルギー ヒューガルデンホワイト 330ml瓶 ABI 海外輸入ビール 1,800円
エストレージャダム 瓶 330ml スペインビール 海外輸入ビール 3,700円
ギネス エクストラスタウト 330ml瓶 海外輸入ビール アイルランドビール 3,300円
ハイネケン 350ml 缶 海外輸入ビール オランダビール 2,700円
通販サイトごとの送料や品揃えは、輸入ビールが買えるネット通販8選で比較している。
よくある質問
輸入ビールに関税はかかる?
WTO加盟国・地域から輸入するビールは協定税率で無税になる。主なビールの輸出国はすべて当てはまるので、実際には関税0円で入ってくると考えていい。かかるのは酒税と消費税だ。
海外で飲むビールが日本より安いのはなぜ?
その国の酒税が日本より低いことが大きい。ヨーロッパのビール産地には、ビールの税金を軽くしている国が多い。東南アジアは物価そのものが低い。日本に持ってくると日本の酒税がかかるので、現地の値段にはならない。
酒税が一本化されたら、安い輸入ビールはなくなる?
なくなりはしない。発泡酒や新ジャンルは増税になったが、直輸入と大量生産による安さは税金と関係なく残る。むしろ減税になったビールのほうに、値下げの余地ができている。
値段の理由が分かると、選び方も変わる
安い輸入ビールの理由は、関税ではなく、税の区分と大量生産と直輸入だった。高い輸入ビールは、少量輸送と流通の段数がそのまま値段に出ている。
2026年10月の酒税改正で、ビールとそれ以外の税の差はなくなった。これからは「ビールかどうか」より、「どの店がどう仕入れているか」のほうが値段の差になる。気になる銘柄があれば、品目と容量を確かめてから、まとめ買いで送料を割るのがいちばん堅い買い方だ。



