ワイン売り場で棚を眺めていると、ラベルに「Cabernet Sauvignon」「Merlot」「Chardonnay」とカタカナや英字が並んでいる。これがぶどうの品種名だ。
産地や価格よりも先に品種を覚えると、ワイン選びは急に楽になる。品種ごとに味の方向がだいたい決まっているからだ。
赤8品種・白7品種の違いを早見表と図にまとめた。最後に、初心者が最初に買う1本の決め方と、日本で買える場所も書いておく。
ぶどう品種でワインの味はどこまで決まるのか
ワインの味を左右するものは、大きく分けて3つある。
- ぶどうの品種
- 産地の気候と土
- 造り手の造り方(樽を使うか、どこまで熟成させるか)
このうち、初心者がいちばん手がかりにしやすいのが品種だ。理由は単純で、ラベルに書いてあるから。産地の土の違いは飲み慣れないと分かりにくいが、品種の違いは1本目と2本目を飲み比べただけでも感じ取れる。
たとえばカベルネ・ソーヴィニヨンとピノ・ノワール。同じ赤ワインでも、グラスに注いだ時点で色の濃さがまるで違う。皮の厚さが違うからだ。
赤ワインと白ワインの違いも、まずはぶどうから
赤ワインは黒ぶどうを皮や種ごと漬け込んで発酵させる。白ワインは主に白ぶどうを搾った果汁だけで造る。
赤ワインの「渋み」の正体は、皮と種から溶け出すタンニンだ。だから皮が厚い品種ほど渋く、色も濃くなる。白ワインにはこの渋みがほとんどない。代わりに酸味と香りの違いが品種の個性として前に出てくる。
主要ぶどう品種の味の傾向早見表
よく見かける品種を、味の方向が分かる形で一覧にした。重さは「軽い・中くらい・重い」の3段階で書いている。
赤ワインの品種
| 品種 | 味の傾向 | 重さ | 主な産地 | 合う料理 |
|---|---|---|---|---|
| カベルネ・ソーヴィニヨン | カシスのような濃い果実と、しっかりした渋み | 重い | フランス・ボルドー、チリ、アメリカ | ステーキ、ハンバーグ |
| メルロー | プラムのような果実味。渋みはまろやか | 中くらい | フランス・ボルドー、チリ | 豚の生姜焼き、ミートソース |
| ピノ・ノワール | イチゴやチェリーの香り。色が薄く軽やか | 軽い | フランス・ブルゴーニュ、ニュージーランド | 鶏肉、鮭、きのこ料理 |
| シラー(シラーズ) | 黒こしょうのようなスパイス感と濃い果実 | 重い | フランス・ローヌ、オーストラリア | 焼肉、スペアリブ |
| マルベック | 色が濃く、果実味がたっぷり | 重い | アルゼンチン | 牛肉の炭火焼き |
| テンプラニーリョ | 赤い果実と、熟成すると革やバニラの香り | 中くらい | スペイン・リオハ | 生ハム、煮込み |
| サンジョヴェーゼ | 酸味が高めで、さくらんぼのような香り | 中くらい | イタリア・トスカーナ | トマトソースのパスタ、ピザ |
| ガメイ | 渋みが少なく、軽くてフルーティー | 軽い | フランス・ボージョレ | 焼き鳥、ハム |
白ワインの品種
| 品種 | 味の傾向 | 重さ | 主な産地 | 合う料理 |
|---|---|---|---|---|
| シャルドネ | 樽なしはりんごやレモン、樽ありはバターやナッツ | 軽い〜重い | フランス・ブルゴーニュ、オーストラリア、アメリカ | 白身魚のムニエル、クリーム煮 |
| ソーヴィニヨン・ブラン | ハーブやグレープフルーツの爽やかな香り | 軽い | フランス・ロワール、ニュージーランド | サラダ、カルパッチョ |
| リースリング | 酸がくっきり。辛口から甘口まで幅がある | 軽い | ドイツ、フランス・アルザス | 春巻き、エスニック料理 |
| ピノ・グリージョ | 香りは控えめで、すっきり飲める | 軽い | イタリア北部 | 天ぷら、魚介のパスタ |
| ヴィオニエ | 桃やアプリコットの華やかな香り。コクがある | 重い | フランス・ローヌ | 鶏のクリーム煮 |
| ゲヴュルツトラミネール | ライチやバラのような甘い香り | 中くらい | フランス・アルザス | 中華料理、スパイスの効いた料理 |
| ミュスカデ | 軽くて酸が穏やか。塩気のある味わい | 軽い | フランス・ロワール | 牡蠣、刺身 |
表だけだと位置関係がつかみにくい。赤と白、それぞれを2軸に置いてみる。
赤ワインの品種を味マップで比べる
左下から右上へ、ほぼ一直線に並ぶ。重い品種ほど渋みも強い、ということだ。
カベルネ・ソーヴィニヨン
赤ワインの代表格。皮が厚く、色は黒に近い紫になる。渋みが強いので、単体で飲むと口の中がきゅっと締まる感じがあるかもしれない。
肉料理と合わせると印象が変わる。脂がタンニンをやわらげ、果実の甘さが前に出てくる。

オーストラリア産のカベルネ・ソーヴィニヨン。温暖な産地らしく果実味が濃く、渋みは角が取れている。
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メルロー
カベルネ・ソーヴィニヨンと同じボルドーの品種だが、性格はずっと穏やか。渋みが丸く、果実味が先に来る。
「赤ワインは渋くて苦手」という人が最初に試すなら、まずここから。
ピノ・ノワール
皮が薄く、色は透けるほど明るい。渋みは少なく、香りはイチゴや紅茶にたとえられる。
栽培が難しい品種で、同じ価格帯なら他の品種より少し高くなりやすい。
シラー(シラーズ)
フランスではシラー、オーストラリアではシラーズと呼ばれる。同じ品種だ。
黒こしょうのような香りがはっきり出るのが特徴で、焼肉のタレやスパイスとよく合う。
白ワインの品種を味マップで比べる
白は赤ほどきれいに並ばない。香りの強さとコクが、品種ごとにばらばらに出るからだ。
シャルドネ
世界中で造られている白ぶどう。品種そのものの香りは控えめで、そのぶん造り方の影響を受けやすい。
樽を使わずに造るとりんごやレモンのようなすっきりした味。樽で熟成させるとバニラやバターの香りが加わり、コクのある白になる。図の中で2か所に分かれているのはそのためだ。

オーストラリア産のシャルドネ。パイナップルのような熟した果実の香りが出やすい、温暖な産地のスタイル。
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ソーヴィニヨン・ブラン
刈ったばかりの草やハーブ、グレープフルーツの香り。グラスに鼻を近づけた瞬間に分かるくらい、個性がはっきりしている。
ニュージーランド産は特に香りが強く、初心者でも違いをつかみやすい。
リースリング
酸がくっきりした品種で、ドイツでは辛口から極甘口まで造られている。甘口が苦手なら、ラベルに「Trocken(トロッケン)」とあるものを選ぶといい。ドイツ語で辛口の意味だ。
同じ品種でも産地で味が変わる
品種を覚えたあとで、ひとつ引っかかる人が多い。「同じカベルネなのに、前に飲んだものと全然違う」。
これは産地の気候の差だ。
涼しい土地では、ぶどうがゆっくり熟す。酸が残り、すっきりした味になる。暑い土地では糖度がよく上がり、果実味が濃く、アルコールもやや高めになりやすい。
ざっくり言えば、フランスやドイツは冷涼側、チリ・オーストラリア・アメリカのカリフォルニアは温暖側だ。チリのカベルネが安いのに濃くて分かりやすいのは、この気候のおかげでもある。詳しくは「チリワインはなぜ安い?理由とコスパ最強のおすすめ銘柄」に書いた。
ラベルから品種を見つける方法
品種が分かっても、ラベルのどこに書いてあるか分からなければ選べない。
チリ、オーストラリア、アメリカ、ニュージーランドなどのワインは、表ラベルに品種名を大きく書くことが多い。英字で「Cabernet Sauvignon」とあれば、それが品種だ。
ややこしいのはフランスやイタリアの伝統的な産地。「Bordeaux(ボルドー)」「Chianti(キャンティ)」のように、品種ではなく産地名で売っている。この場合、中身は産地から推測するしかない。
| ラベルの産地名 | 主に使われる品種 |
|---|---|
| ボルドー(赤) | カベルネ・ソーヴィニヨン、メルローのブレンド |
| ブルゴーニュ(赤) | ピノ・ノワール |
| ブルゴーニュ(白)、シャブリ | シャルドネ |
| サンセール | ソーヴィニヨン・ブラン |
| キャンティ | サンジョヴェーゼ |
| リオハ | テンプラニーリョ |
| ボージョレ | ガメイ |
品種名を書く場合のルールも国によって違う。EUやオーストラリアでは、ラベルに書いた品種が85%以上使われていることが条件になっている。残りに別の品種が少し混ざっていることはある。
品種の名前をはっきり書く新世界のワインから入るのが、いちばん迷わない。国ごとの特徴は「【国別】海外ワインおすすめ30選|産地の特徴と選び方」でまとめている。
初心者が最初に買う1本の選び方
早見表を見ても決められないときは、普段の好みから逆算する。
- 渋いお茶やブラックコーヒーが平気 → カベルネ・ソーヴィニヨン、シラーズ
- 渋いものは苦手だけど赤が飲みたい → メルロー、ピノ・ノワール
- 酸っぱいものが好き、さっぱり飲みたい → ソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・グリージョ
- まろやかでコクのある味が好き → 樽を使ったシャルドネ
もうひとつのコツは、同じ品種を2本、別の国で買って飲み比べること。フランスとチリのカベルネ、ブルゴーニュとオーストラリアのシャルドネ。品種の共通点と産地の違いが一度に分かる。
1本目から高いワインを買う必要はない。品種の違いを知る目的なら、1,000〜2,000円台で十分に差が出る。
ワインはどこで買える?
品種で選ぶなら、品種名で検索できる通販がいちばん早い。店頭だと、品種ごとに棚が分かれていないことも多いからだ。
→ オーストラリアのクオリア・ワインズ「ソルトブッシュ」のカベルネ・ソーヴィニヨンとシャルドネを扱っている。赤と白を1本ずつ買えば、この記事の早見表の上下を一度に試せる。輸入食品やおつまみと一緒に注文できる
- 楽天市場
→ 品種名で検索すると数千件出てくる。同じ品種を国違いで揃えたいときに向く
- スーパー・カルディ・業務スーパー
→ 1,000円前後のチリ・オーストラリア産が中心。品種名が大きく書かれたものが多く、初心者には選びやすい
店舗ごとの品揃えは「カルディのワインおすすめランキングTOP20」と「業務スーパーのワインが安い!おすすめ銘柄と実際の味」、通販の比較は「輸入ワインが買えるネット通販10選」に詳しく書いている。
まとめ
赤なら「渋みの強さ」、白なら「香りとコク」。品種の違いは、この2つの見方でほぼ整理できる。
最初に覚えるのは4つで足りる。重い赤のカベルネ・ソーヴィニヨン、軽い赤のピノ・ノワール、爽やかな白のソーヴィニヨン・ブラン、造り方で変わる白のシャルドネ。この4本の位置が分かれば、残りの品種は「どれに近いか」で見当がつく。
気になった品種があったら、次は同じ品種を別の国で1本。それだけで、ラベルを見たときの解像度がだいぶ変わる。



